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身体の中に響く鼓動が、まるで時計の秒針になったみたいだ。
時の進み方が、スローモーションのように際立つ。
「あ、あのっ。」
「ん?」
「いま言ったこと……。」
「うん。」
気にしないでください、と言いたいところだけど、本当は気にしてほしい。
返事はしなくていい、と言いたいけど、本当は知りたい。
私、美馬さんの気持ちが知りたい。
だけど、怖くて。
本当に、美馬さんのことを好きになってしまったから、これ以上好きになることが怖い。
それが、独りよがりな恋になるのが嫌で、美馬さんの気持ちを知って、お互いが思い合っていることを望んでいるけれど、それが私だけかもしれないから。
「もう1回聞かせて。」
黙ってしまった私の代わりに、美馬さんの声が間を繋いだ。
「もう、1回ですか?」
勢い交じりで言えたことを、もう1度言うのって、どうしてこんなに言いにくくなるんだろう。
もう伝えてしまった気持ちを伝えるだけなのに、途端に頬が熱くなって、喉がギュッと力を持ち始める。
「明奈さん、聞かせて。」
コツコツと軽快な音が止まった。
言ったら、返事をくれるの?
伝えたら、同じ気持ちだと知ることができるの?
私が望む答えを、くれますか?
祈るような気持ちで、耳に当てた携帯を握る手に力を込める。
「美馬さん。」
「はい。」
「私っ……。」
ここまで口にして、迷惑なほどに鳴り響く鼓動の音が邪魔だと感じる。
私の冷静を、否応なしに奪っていく張本人だ。
「好き……です。」
「うん、誰のことが?」
瞬時に止まる呼吸と、ドンっと鳴る鼓動。
震える携帯を持った手を、もう片方の手で包んだ。
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