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何が起こっているのか、分かっているけど、分からない。
好きと伝えたら、同じ気持ちを返してくれた。
会いたい気持ちが、通じた。
こんなにいい事が続くと、考えが纏まらなくて、思考回路が停止しようとするものなのかな。
それとも、私だけなのかな。
自分を鏡の中に見つけて、簡単にメイクを施した。
こういう時でも、それなりにできる術を知っているのは、職業柄ラッキーだと思う。
そして、ほんの少しだけ清潔感のある香りを纏った。
寝付けない時に振る、私にとって気合いを入れるためではない香水。
ベッドに放っていた携帯のディスプレイが明るくなって、美馬さんからの着信を報せている。
「…もしもし。」
さっきまでの情熱的な自分を、今の私が振り返って、恥ずかしくなる。
あんなに気持ちを言えた自分が、他人みたい。
「明奈さん、着きました。」
「あ、はい…。」
手には部屋の鍵だけを持って、玄関を出た。
「今行きます。」
「うん。」
エレベーターが来るまで、何度も深呼吸をする。
-僕も、明奈さんのことが好きだ。
-好きだよ。今すぐに抱きしめたい。
言われた言葉を繰り返し思い出しては、緩む頬を引き締めて。でもまた、思い出してしまうと、また緩んで。
エントランス階に着いて、マンションから僅かに漏れる灯りの中に、美馬さんの姿を見つけた。
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