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「初めて会ったときから好きだった。食べてしまいたいほど、君が好き、ねぇ……。」 紫煙の向こうに、皐月がいる。 「よくそんなことを言えるもんだよねぇ。」 ビール片手に煙草を燻らせて、今日は惚気に付き合ってくれると言っていたのに、浮かない顔をしている。 「もう1杯飲む?」 「そりゃ飲むけど。」 「けど、何?」 「明奈のどこが気に入ったのかと…。」 とても不思議そうな表情をして、私が差し出したメニューを受け取った。 「失礼なっ!これでも一応女の子なんだから、気に入られる資格はあるんだぞー。」 ほろ酔いになってきている私は、皐月よりもピッチが上がっている。 こんなに美味しいお酒は久しぶりだ。 たまにはいいかと思って、付き合ってもらうのは勿論皐月しか浮かばなくて。 「超絶美人ってわけでもないし、スタイルが最高ってことでもないし…。」 「だから、中身。」 「中身って、性格とか思考ってこと?」 「そーそー。」 自画自賛している私の性格も、特別いいわけでもないんだけど。 「それは、ないでしょ。」 店員さんを呼ぶボタンを押して、メニューを畳んだ皐月が一刀両断する。 「初めて会った時から好きだった、んだから。性格なんて分かりっこない。」 ふぅーっと、遠くへ煙を追いやって、海老マヨをパクりと食べた皐月を私は睨んだ。 せっかく幸せ気分なのに。 「そのあと、何回か会ってたもん。」 「片手が余る回数しか会ってないでしょ。」 指をヒラヒラさせる皐月。 「明奈はね、大人のくせに経験足りないっていうかさ。経験が生きてないというか。私も人のことは言えないけど、他人の恋愛ほどよーく見えるのは、明奈だって同じでしょ?」 私はゆらりとする脳で、捲し立てられたセリフを理解して、こくりと頷いた。 「一目惚れって言いたいんじゃないの?美馬さん。」
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