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だけど、その時は訪れた。 思いもよらないタイミングで。 案外、身近な場所で。 「こっちの色が似合うと思うけど。 ……お姉さんはどう思いますか?」 お姉さん。 そう言われることには慣れてるけど……新鮮に聞こえる。 「そうですねぇ……どちらも定番のカラーでして、良くお似合いですよ。 元気なイメージか、大人っぽいイメージか……それによって変わってくると思います。」 一応、店員としての最低限の仕事はする。 聞かれたことには、的確に返す。 本当は、この男性が言ってることが正解で、女性が好んでいるカラーは似合っていない。 流行の色で雑誌でモデルが使って、また人気が再燃して……持っていたいという気持ちになるのは、同じ女子として分かる。 「あたしはこっちがいい。」 「じゃあ、そうしようか。」 結局、似合っていない色を買っていった。 どっちでもいいって答えを言わずに、ちゃんと似合う方を言ってくれた男性の意見なんか、最初から求めていなかったんだろうなって思う。 彼氏と彼女。 そういう関係なのかなぁ……なんか違う感じもしたけど。 そうじゃなかったらいいのにな。 また会えたらいいのに。 外見は、私の条件ぴったりだから。 もっと知りたい。 私の待っていた人かもしれないから……。
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