こんばんは、妖怪

2/8
前へ
/360ページ
次へ
モノクロカラーの小さな魔法使いは、都会の上空から夜の摩天楼を見下ろしていた。 月が強く輝いている。 「ねんねんころりよおころりよ。ぼうやよいこだねんねしな。」 彼女は呪文のように歌った。 「この都会も、いずれ私の手中に落ちるのかと思うと、興奮しちゃいますねえ。」 深紅の瞳をぎらつかせ、その魔女は微笑んだ。 ……彼女は、この上なく、そして今までにない、 人類<史上>最強の、怪物だ。 黒の魔女はビルから飛び降りた。 刹那、体が浮くような感覚。足が地を離れた感覚。 束の間の解放だ。 しかし、すぐ眼下のアスファルトは、待ってましたとばかりに重力で魔女を手繰り寄せた。 時速10、20、30。 魔女は笑っていた。 「例え地球でも。例え相手が地球でも、私を殺せやしない。」 40、50。 「なぜなら私は神だから!!」 60、70。 0。 魔女は砕け散った。
/360ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加