俺を恨んでみろ

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「おいおい。お前ら、こんな雀の涙渡されて俺たちが満足するとでも思ってんのかよぉ?」 親子が3組、全てに父親はおらず……彼らの死体は転がっており、母親と子供が数組、数人の屈強な男達に囲まれて震えているのが分かる。もはや抵抗の意思さえ見えない。 母親達は子供が泣いているのをあやしているのか抱きしめている。 恐喝しているのは落ちぶれた軍の騎士達。報われない毎日に彼らの鬱憤は溜まるばかり。酒を飲めば飲むほどどこかへ爆発させたくなるのは当たり前。 村はずれともなると強力な武器を持つものが権力を持つのと同じである。 「も、もう…お金はありません。どうか、これでお許しを…」 彼女達は何も悪い事はしていない。ただ、憂さ晴らしに付き合わされているだけだ。 「うーん。そうだなぁ、剣の切れ味も確かめさせてもらったし、お金も頂いたしなぁ……」 「じゃ、じゃあ」 母親の淡い期待を尻目に首謀者であろう騎士は一組の親子を二人諸共串刺した。子供は即死。そして死ぬ間際に母親は驚嘆の顔を見せた。 どうして?そんな言葉が頭に浮かぶ。 騎士達からはクスクスと笑いが起こる。 「でも軍にチクられると面倒だから皆殺しな」 彼らはこの顔が見たかった。 平和を突然誰かに奪われる。 絶望。 憎しみ。 恨み。 その感情達が一度に集まるその表情をただ見たかっただけ。 そのためだけに母親が美人ではない家庭を選んだ。質素な家庭を選んだ。下調べしてまで幸せな家庭を選んだ。 不幸からの幸せからの絶望。 どんな人間でもこれ以上はない。
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