プロローグは昼食の前で

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隠したということは、俺の刹那的願いであった『高性能カチューシャ』という可能性も絶たれたのだ。 これはもうSFにもラブコメにも当てはまらない、正真正銘ファンタジーだ。 とりあえず言おう、そんな馬鹿な。 「……ねぇ」 ニット帽を深めに被った彼女が、さぞかし不審そうな目で俺を見ている。 確かに口が半開きで立ち尽くしているという点では俺の方が怪しいが、この状況で怪しまれるべきは彼女のはずだ、俺ではない。 「なんだ」 俺は状況をあたかも冷静に受け止めているかのように、縁の大きめな黒い眼鏡を中指で押し上げながら答えた。 もちろん中身はご存知の通り、激情渦巻いてパンク寸前だ。 現に眼鏡は眉間に食い込んでいる。
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