9人が本棚に入れています
本棚に追加
「押忍っ! すぐ行きま……っ!」
そう返事を返しながら正面を振り返ると。
「辰巳 (タツミ)ーー」
対面で静かに一連のやり取りを眺めていた俺の〝宿敵〟 山城 辰巳 (やましろ たつみ) の姿が、そこにはあった。
通算成績、全戦無敗。超高校級の実力を持つ、まさに神童の中の神童と言われている化け物みたいな奴だ。
まぁ、その肩書きにビビって、大抵の連中はやり合う前に戦意喪失しちまうみたいだが、俺には全く全然関係ない。
むしろ、勝てる奴と戦うより断然燃える展開だ! とさえ思っている。
それが例え、今も観客席でワーワーと喚いている巴と同じく、俺にとって辰巳が古くからの幼馴染で無二の親友だったとしても、その思いだけは絶対に変わらない。
「両者、前へ!!」
主審の指示に従い、一歩、二歩、三歩と、前へ歩みを進める俺と辰巳。
そして互いの視線が見えるところまで距離を詰めると、帯刀していた竹刀を正面に抜きながら腰を落とし、剣尖を重ねると同時に俺は深く息を飲んだ。
スゥッッーー良しっ!
何処かの無駄に胸のでかい誰かさんのせいで変に荒ぶってしまった心を、鋭く光る刃の様に研ぎ澄ませていくのを感じる。
最初のコメントを投稿しよう!