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「…………」
「…………」
お互い無言のままスッと姿勢を戻し、視線をぶつけ合いながら、その時が来るのを静かに待った。
そしてーー
「これより高校二年生の部、決勝戦を取りおこなう! それでは、両者ーー始めぇいっ!」
「セイヤァァァァァァッー!!」
「サァァァァァァァァッー!!」
主審の合図とほぼ同じタイミングで、俺は辰巳の脳天を目掛け、辰巳は俺の脇をすり抜けるように胴を目掛けて壱の太刀を放つ。
「メンイヤアアアアアアッ!!」
「ドオオオオオっァァァァっ!!」
その瞬間、パシィーンっと渇いた音を鳴らし、俺と辰巳の位置が一瞬のうちに入れ替わった。
「………………むっ!」
しかし、お互い残心が甘かったせいか、審判達の旗は上がらず、そのまま試合は続行。
電光石火で幕を切った俺達の試合を目の当たりにし、驚愕の色を帯びた歓声が会場中で沸きおこった。
おのれ、タツの野郎。
こっちは今日一番の速さで打ち込んだっつーのに、あっさりと合わせてきやがるじゃねーか。
正直、この一撃を決める為にジジィの血の滲むようなシゴキを乗り越えてここまで来たというのにーー
「クソっ!」
前より断然、動きが速くなってやがるじゃねーか!!
あれじゃ目で追うのがやっとだぞ、マジで!
「こらぁっ! 馬鹿考乃!! 不意打ちが失敗したからってボーッとすんなぁー!! それより、うしろ、うしろっ!!」
「う、うるせー!不意打ち言うなっ!! 良いかよく聞け巴!! アレは研鑽に研鑽を練って考えたされた必勝の……ってーー」
盛り上がる観客席から一際大きく聞こえてきた巴の声に反応して振り返ると、そこには既に体制を立て直し、俺の喉元を目掛けて二撃目を放つ辰巳の姿があった。
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