始業式は大型スクリーン…

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4月某日。 東堂 雅は、名前を明かさずに生徒会会長に就任した。 生徒会役員の正式な発表と顔見世は新学期の始業式となっている。 「…どうするんだ?」 雅は、きらびやかな生徒会室で生徒会長の椅子に座り、不満げな声を上げた。 「?何が??」 雅の問いに答えたのは、生徒会副会長を務める赤峰 稔だ。 「始業式の生徒会長挨拶だ…」 雅は、尚も不機嫌そうに稔にジト目を向ける。 「どうするも何も…言ったじゃない。雅には普通に在校生として式に出て貰うって…」 稔は、雅の視線も気にせずにさわやかに笑ってそう答える。 「生徒会長挨拶には代行も許されていない…」 雅は、稔の返答も聞こえていないかのように間髪入れずに静かにそう告げる。 「うん、そうだね」 稔は、雅の真剣な声に静かにそして、真剣に言葉を返す。 稔は、分かっているのだ。 どうして雅がここまで生徒会長挨拶を気にするのか、それはいやいやとは言え一度引き受けた仕事を中途半端なものにはしたくないと言う雅のポリシー、プライドからだ。 そんな真っ直ぐな純粋な男だから稔はこの男に着いて行きたいと思ったのだから…。 「…」 雅は、真っ直ぐに稔を見詰める。 言葉などなくても雅の言いたいことを理解するにはその視線だけで十分だ。 「クス…大丈夫だよ。雅は心配しないで?ちゃんと雅に生徒会長挨拶をして貰うから」 稔は、困ったように苦笑するとそう言って雅の前にまっさらな原稿用紙を差し出した。 「俺に??」 雅は、その原稿用紙を受け取りながら怪訝そうに声を上げる。 「ちゃんと僕らに考えがあるんだよ…雅は、とりあえずその原稿用紙に生徒会長挨拶を書いてね」 稔は、満面の笑みでそう言うとくるりと踵を返して生徒会室の出入り口へと向かう。 「稔??」 雅は、稔の行動が分からずに不思議そうに声を上げる。 「僕は僕で準備があるんだ…それじゃぁ、雅…後でね??」 稔は、どこか妖しげな微笑を雅に向けてそう言うと生徒会室を後にした。 「…何であんなに楽しそうなんだ??…(とりあえず…挨拶を考えるか…)」 雅は、普通なら男でも動揺するであろう稔の妖しげな微笑みをものともせずに自らの仕事に取り掛かる。 こんな風にこの学園では異端な反応をするところも雅の魅力の一つなのであろう。
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