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楽屋の椅子に腰かけた
佐江の膝の上に
しがみつくようにして抱きついた智。
すぐにでも
眠りの世界に引き込まれてしまいそうな
その深い息遣いが
一定の間隔で
佐江の腕の中の空気をかきまぜる。
温かくて愛おしくて思わずもれた
「智、好きだよ。」
小さく響く佐江の言葉に
「知ってる。」
腕の中で重たい瞼を持ち上げて
悪戯に笑う智が返事をした。
屈託のない笑顔に心が満たされる。
「だって
佐江たんのドキドキ聞こえるもん。」
満足そうな声と嬉しそうな表情。
実は佐江も聞こえてる。
智の
トクン…トクン…と脈打つ鼓動。
一定のリズムがいつも
この腕の中に響いてる。
時々
智の心臓の音と
佐江の心臓の音が重なって
すごくうれしくなるんだ。
同じ時を
同じ間隔で生きてるって
実感できるから。
智が顔をうずめる
佐江の腕の中にはいつも
2人だけの
生きてる音色が響いてる。
それが嬉しくて
ギュッと抱きしめた腕の中。
智は
気が付いたら眠ってしまっていた。
温かい体温と呼吸。
この腕の中の世界を守っていたい。
ただそれだけで幸せに思えた。
___end 《2人のリズム》
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