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胸くそ悪い事はこれで終わりと、明るくそう促すあやめさんの言葉に、僕は従えずに立ち止まった。
瑞希君とは静香のお兄さんで、いつもキッチンで色々なものを作ってくれる。
それは本当に美味しいのだけど、僕はそれどころじゃなかった。
僕と一緒にいたらこの人達に迷惑がかかる。
甘えるわけにはいかない。僕一人で戦わなくては!
「あの、僕は大丈夫ですから、もう構わないで下さい」
僕がそう言うと、静香は僕の腕を掴んだ。
「大丈夫じゃないだろ?
つれないこと言うなよ」
「放っておいて下さい」
「このまま知らないフリなんて出来るハズがないだろ?」
ダメだ。静香は引かない。
正義感の強い優しい子だけに僕を放っておくなんて事は、どうしても許せないのだろう。
仕方がない。
僕は敢えて冷たい視線で早口の英語で言った。
「僕に構うなと言ってるんだ!
鬱陶しいんだよ。お前は!」
目を極限まで見開いて、愕然とする静香を置いて、僕はもう一度睨み付けると、そのままその場を走り去った。
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