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金色の髪の青年と目が合う。
底知れぬ深い紫の双眸に、一瞬で捕らえられた。
妖艶に微笑む青年は、この世の者とは思えぬほど美しい。
美しく、恐ろしい。
ごくりと生唾を飲む音が妙に耳に響いた。
「今宵は良い月だ。…ちょうどお前の事を考えていたよ、頼爾…」
青年はゆったりとした仕草で歩み寄り、頼爾の頬にそっと手を這わせる。
信爾は、じりりと微かに後退っている自分に気づいた。
「…頼爾の弟君かな?あの男の若い頃に良く似ている…」
「…信爾、と申します…」
やっとの事でそう言った。言っただけでどっと汗が吹き出る。
「我が名は玻璃月(はりづき)」
「はり…」
「信」
無意識に名を復唱しようとした信爾を、頼爾が止めに入った。が、それと同時にひやりとした感触が信爾の喉元に触れた。
ぎらぎらとした恐ろしい目で蘇芳が信爾の喉に短刀を宛がっていた。
一瞬の出来事の後を一陣の風が追ってくる。
「主の名を呼べると思うな、愚か者」
冷えた声で蘇芳が凄んだ。
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