月に乞う者

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くらくらと目を眩ませながら、もう一度ゆっくりと玻璃月を見た。 「…?」 さぁっと夜風がいたずらに吹き荒れる。 玻璃月の美しい金色の髪から、二本の角が露になった。 そこで初めて、目の前の青年の正体を知る。 「…鬼…」 信爾が呟きに、玻璃月はにやりと笑みを浮かべた。 「おや、気づいてなかったのかい?仕方のない子だ…」 さも愉快そうに笑い、信爾の頬に手を伸ばす。鋭利な爪の先は南天色だった。 「玻璃月…信爾を構うのも良いが、今日は用事があって来た。出来れば早めに済ませたい」 「…そうか…では中へ入ろうか」 通されたのは母屋だった。豪奢な造りの部屋に信爾はまたそわそわとしてしまう。 「…人は払ってある。何なりと話を」 「…最近京でかまいたちのような事件が頻発している。若い女ばかりが狙われている」 「ああ、それなら聞き覚えがあるねぇ。…あれだろう?受領の娘も被害に遭ったやつだろう?」 玻璃月がさらりと言った言葉に頼爾がぴくりと眉を上げる。 「安心おし、手は出していないよ」 「な、なぜ真火さん…のことをご存じなんですか?」
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