月に乞う者

9/10
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/91ページ
信爾が尋ねると、玻璃月は妖しげな笑みで笑いかけた。 「世間に疎くては鬼も務められないのさ」 「はぁ…」 「確かに、真火のは何かの力が関わっているようだが…他のは人間の仕業もあるようだよ?」 「ああ、そうだろうな」 溜め息交じりに同意する頼爾に信爾は驚いた。 「それはどういう事ですか!?」 「真火のは明らかに妖の仕業だろうな。他の、人影を見たとか言うのは騒ぎに乗った人間だろう」 「…兄上、いつからそう思っていたのですか?」 「お前が私に報告したときから」 ―なんと、最初からではないか。 信爾は愕然とし、言葉も出なかった。 「あと…内裏にいる女御の部屋に、青白い炎が現れるという」 「璃胡かい?」 「またお前は…。一体何人の女に手を出している」 「あの娘は美しいよね。…手は出していないよ、まだ童子じゃないか」 「…かろうじて常識はあったか」 頼爾の物言いに玻璃月は口を尖らせる。その姿はまるで普通の青年なのだが。 「で?青白い炎?…最近行ってないからねぇ…そう…」 ふと目を細めたその顔は冷えきった氷のようで、ぞくりと背筋に寒気がした。 次の瞬間、信爾と目が合うとまた目を細い月のように細めた。 「おや、どうしたんだい?…頼爾も、そんな顔をするんじゃないよ。私にはお前ほどに心動かす者はいないからね」 「だから、そういうことじゃないだろう」 眉間に皺を寄せる頼爾に、頬杖をついて微笑む玻璃月。 なんだか二人の様子が微笑ましくて、信爾はつい笑ってしまった。
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!