12人が本棚に入れています
本棚に追加
/91ページ
信爾が尋ねると、玻璃月は妖しげな笑みで笑いかけた。
「世間に疎くては鬼も務められないのさ」
「はぁ…」
「確かに、真火のは何かの力が関わっているようだが…他のは人間の仕業もあるようだよ?」
「ああ、そうだろうな」
溜め息交じりに同意する頼爾に信爾は驚いた。
「それはどういう事ですか!?」
「真火のは明らかに妖の仕業だろうな。他の、人影を見たとか言うのは騒ぎに乗った人間だろう」
「…兄上、いつからそう思っていたのですか?」
「お前が私に報告したときから」
―なんと、最初からではないか。
信爾は愕然とし、言葉も出なかった。
「あと…内裏にいる女御の部屋に、青白い炎が現れるという」
「璃胡かい?」
「またお前は…。一体何人の女に手を出している」
「あの娘は美しいよね。…手は出していないよ、まだ童子じゃないか」
「…かろうじて常識はあったか」
頼爾の物言いに玻璃月は口を尖らせる。その姿はまるで普通の青年なのだが。
「で?青白い炎?…最近行ってないからねぇ…そう…」
ふと目を細めたその顔は冷えきった氷のようで、ぞくりと背筋に寒気がした。
次の瞬間、信爾と目が合うとまた目を細い月のように細めた。
「おや、どうしたんだい?…頼爾も、そんな顔をするんじゃないよ。私にはお前ほどに心動かす者はいないからね」
「だから、そういうことじゃないだろう」
眉間に皺を寄せる頼爾に、頬杖をついて微笑む玻璃月。
なんだか二人の様子が微笑ましくて、信爾はつい笑ってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!