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「事件の首謀者だけれど」
屋敷から帰ろうとしたとき、ぽつりと玻璃月が言った。
「思い当たる節がある…私も少し調べてみるよ」
そして一輪の花を頼爾へと差し出した。
「…芙蓉(ふよう)に、あげてくれないか」
そう言った玻璃月の声は弱く、泣きそうな微笑みを浮かべていた。
頼爾は小さく頷き、花を受け取る。
「また来る」
一歩門から出ると、玻璃月の屋敷はまた元の廃邸に戻っていた。
すべて夢だったのかと思わせるほど、白々とした朝日が世界を照らしていた――
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