迷える月

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怒涛の一日だった。 すっかり日の昇った頃に自分の屋敷に着くと、どっと疲れが出た。 簀子に座って庭を眺めていると、昨日からの出来事が頭の中を駆け巡る。 「はぁ…なんか、いろんな人に会ったなぁ」 ――ヒトじゃない人にも会えたし。 「…そういえば、あの玻璃月って鬼…兄上の式神だったりするのかな…」 爽やかな秋空に向かってぽつりと呟くと、凛とした声が後ろから響いた。 「そんなわけないじゃない」 「…え?」 後ろを振り向くと、部屋の真ん中に黒い猫が鎮座していた。 「あれ、お前この前兄上のところにいた猫だね」 手招きすると猫は信爾の膝に頭を刷り寄せた。 微笑み、優しく頭を撫でる。 「可愛いな…あ」 庭に咲く白い花に気付き、するりと簀子を降り、その小さな白い花を摘む。 「お前の綺麗な黒い毛に、よく映えるよ」 そっと猫の耳の辺りにその花を乗せる。 猫は目を細め、ぐるぐると喉を鳴らした。
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