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長身の見目麗しい男がそこにはいた。
白い肌に切れ長の瞳。すべてが完璧に整った顔立ち。
「…!秋柾(ときまさ)様…」
真火の表情が固くなる。この秋柾という男が、元婚約者なのだろう。
信爾は真火より一歩後ろに下がった。
けれど不思議なことに秋柾の視線は信爾から離れなかった。
「?…あの」
「やはりそうだ。あなた、先日の歌合いにいらしてましたね?」
「え、はい」
「珍しい髪の色だったので覚えています。…それに美しい…」
「は?」
恍惚とした表情で見つめられ、信爾は怪訝な顔をした。
秋柾ははっと我に返り、真火を見た。
「ええと…そしてあなたが、真火さん」
「はい…」
「先日は私の父が失礼を致しました。婚約の件…実は、あなたばかりのせいではないのです」
秋柾が言いにくそうにため息を吐く。
真火はきょとんと首を傾げた。
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