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(髪…よく見たら、短い…)
世の女性が命よりも大切だと言う髪が、肩より少し下でばっさり切り落とされている。
(…自分と同じ髪の色ってことに浮かれてしまったな…)
信爾は静かに反省する。
「…事件があった次の日、私の祝言は取り止めになりました。物の怪憑きは要らないんだそうです」
真火は儚げに笑った。
「それでもあの人は…来てくれると思ってた。親が反対したとしても私を攫いに来てくれると…信じてた…」
そこまで話すと、またさめざめと泣いた。
「こっそり文を出したのです…ここで落ち合いましょうと…。あれから二日…」
相手は現れることはなかった。
信爾の胸が軋んだ。事件に巻き込まれたのは彼女の所為ではないのに。
「あれ…?じゃあ攫われて、助けようとした男の肩が噛み砕かれた…って言うのは?」
「…え?何ですか?その話…」
きょとんと返され、信爾は驚いた。
「それってどういう…」
「つまり何者かが真火の身代わりになった…もしくは、
すべて仕組まれた事の一部かもしれない」
頼爾の言葉が耳にはっきりと刻まれる。
「…まだ事件は起こると?」
「首謀者は捕らえられてはいない。
父上は、すべて見越した上で私たちで解決しろと仰っているんだろうな」
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