はじまり

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チーン 小気味良い音。 オーブンの蓋を開けると共に、溢れ出す柑橘類の香りが鼻をくすぐります。 「よし♪」 今日は皆がうちでお泊まりをする日です。 昼から集合する事になったので、おもてなしのケーキを焼きました。 「完璧ね!カワ○エも白眼を剥くわ。」 味見に確かな手応え。 (これなら光介に文句言われないわね。) と、考えて (なんで光介が出てくるのよ。) 考えなおします。 「真紅ー!いるー?」 「なにー?」 ひょこっ、と小学生のような顔を壁から出しているのは一つ下の弟です。 160にも満たないその身なりは一部の特殊な女子に大人気のようで。 「そろそろみんなが来るわよ。あなたは用意出来たの?何か面白い事するとかって言ってたじゃない。」 「大丈ー夫!姉ちゃんもびっくりすると思うよー!」 と言うやいなや、階段を駆け上がっていく様は。 (ホントに、子供みたいね。) と、思っていても、つい彼に構ってしまうのは、彼の持つ一種の才能なのでしょうか。 リーン、ゴーン、ゴーン 我が家の無駄に重厚なチャイムが鳴りました。皆さんがいらしたようです。
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