私はカマキリ

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「…おい、カマキリ! これ食えよ!!!」 数人の男子が私の席の周りに群がっている。 どちらかと言えば、取り囲まれてる。 目の前に突き出されたのは、得体も知れない虫。 ここの学校は結構な田舎にあって、様々な生き物で溢れているのだが…。 私にとっては、不都合な事限りない。 「はぁ?嫌だし」 気の弱い私は、突き出された手を軽く払うぐらいしか出来ない。 気持ちだけは、目の前にいる奴ら全員殺してやれるぐらい腹が立っているのに。 「うわっ、カマキリに手ぇ斬られた。いってえ」 一人の男子がそう叫ぶと、他の連中がギャハハと笑う 到底中学三年とは思えない幼稚っぷり。 教室の端っこでは、他の女子達が遠巻きからその様子を見ている。 一部はその光景に慣れたのか、素知らぬ素振り。 また、ある一部は 「綾瀬さん可哀想だってぇ」 とか 「綾瀬さん全然カマキリに似てないじゃん。てゆうか、可愛いしー」 など、毛ほどにも思っていない事を男子に言っている。 いつもの事ながらクラスの女子達は、私を助けてくれない。 …いいんだ、こんなの中二の頃から慣れてるし。 今みたいなのが終わったら、また皆も普通に喋りかけてくれる。 そう分っているのに、泣きそうになる自分がいて。 駄目だ、コイツらの前なんかで泣いたりしたら。 逆に加熱させるだけ。 あともうちょっとで、昼休みも終わる。 授業が始まったら、私の勝ちだから! …そう自分に言い聞かせる毎日。 どうして、こんな風になっちゃったんだろう。
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