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桜 別れ
狂ったように咲き乱れる桜の大木。
その下に佇むあなたはまるで、桜の精のようで、消えてしまいそうで。私は思わず後ろから抱き着いた。あなたは驚いて
「__ちゃんどうしたの?」
なんて少し笑いながら聞いてくる。
「なんでもな~い。」
と、笑いながらごまかしてあなたの弱い脇腹をこそばすと、あなたは身をよじって逃げようとする。いつも通りの光景。あなたと私は親友。きっとあなたはそう思ってるよね。私の気持ちなんて知らない純白のあなたの笑顔は眩しくて、愛おしくて、少し……痛かった。
あなたとの出会いは小一のころ。引っ越してきたばかりの私は、まだ友達もいなくて一人で本ばかり読んでいた。そんな私に声をかけてくれたのがあなただった。あなたは今も昔も変わらず、みんなの人気者で、いつもたくさんの友達に、クラスメートたちに囲まれていたね。あなたのおかげで私はクラスに馴染めたんだよ。
そのときから、あなたと君はずっと一緒にいるようになったよね。どこに行くにも一緒。もちろん中学は同じ学校だし、高校も一緒に受験して、一緒に合格した。
だれよりも一緒にいた。クラスメートより、ほかの友人たちより、家族よりも一緒にすごした時間は長い。
あなたのことなら何でも知っている。
私にはあなたが必要なの。
あなたには私が必要・・・・・・だよね。
不意に体をよじるのをやめて私の腕をつかんで体に巻きつけるようにして、あなたは口を開いた。
「__ちゃん、あのね。」
「ん?」
なんとなくいやな予感がした。
「私ね、○○君に告白されたんだ。」
そのことなら知っている。昨日ここに呼び出されて、告白されていたのは見ていた。
「でね、私付き合おうと思うんだ。」
ガラッ――――――――――――。
私の中の何かが壊れる音がした。
「もう返事はしてあるの。今日も一緒に帰る約束しちゃった。」
少し照れたような、でも幸せそうな顔で話す君。じゃあ――――
「もう一緒にはいられないの?」
君にとって私は”必要”じゃないの?
「行き帰りとかは○○君が送ってくれるって言うし、今までみたいには・・・・・・。」
私には君が必要なの。だから君にも私が必要なの。何でそんなこと言うの。君と一緒にいられないなんて考えるだけでありえない。
「じょ、冗談、だよね?」
そう、ただの冗談だ。
「冗談じゃないもん。私これでもモテるんだから。」
少し膨れて笑いながら君は言う。
冗談じゃない・・・・・・・・・・・・・。
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