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いよいよ漁師たちが数人がかりで網の塊ごと人魚を小舟に乗せようとした時、
「それ、俺に売ってくれ。」
まるで魚でも買い取る様にライカが手を挙げた。
「旦那、これはいけねぇ。」
「いくら海賊でも船を沈められるぞ。」
気のいいライカを心配する漁師たちは口ぐちにそう言ったが、ライカはにやりと笑うと、
「小舟に乗せて誰が沖まで連れて行くんだ?。途中で人魚が目を開けたらそいつが今日の飯になるぞ?。殺せばこの村は人魚の呪いを受ける。それより俺に任せろ。」
そう言って人魚を指さす。
「俺の船で遠くに連れて行って流してくる。あんたらはそれを俺に譲ってくれればいい。」
交換だ、と手にはめていた金の腕輪をはずして漁師たちに見せたライカ。
「呪いだって…?。」
「殺すとよくないのか?。」
「誰が沖まで行くんだ?。」
「お、おれはイヤだ。女房と子供が家で待ってる。」
動揺が走る漁師たちの中で、老いた男がジッとライカを見つめていたが、ふっと息を吐くと進み出て金の腕輪を受け取った。
「本当に任せていいんだな?。」
「あぁ、心配いらねぇ。遠くまで持っていく。」
「……物好きだな、ライカ。」
「俺は海賊だ。呪われた宝にも血が騒ぐんだ。」
成立した取引にライカが少年のように笑う。
最初は心配する風だった相手もあきらめたように苦笑して人魚を引き渡す様に告げた。
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