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上条によると、爆発があったのはターミナル貯蔵区の火薬資源管理施設。自治の警戒レベルが最も高い施設のひとつだ。
火薬は耐炎フィルターで隔離されておりそれを内部から何者かに爆破されたようだ。
幸い怪我人もなくいま救急部隊~レスキュー~も向かっているらしい。
「…というのが今回の顛末だ。残念ながら事件性が高いからあたし達の管轄外だ。」
と、上条は言葉とは裏腹に全く残念そうに見えない表情で答える。
「物騒な世の中になったモンだな。…もぐもぐ。」
徹も手持ちの串焼きを頬張りながら能天気につぶやいた。
「いやいや…。もう少し緊迫感を持ってもいいんじゃ…。」
と言いつつ僕もその場は自治に任せようとしているんだけど。
院生は事件事故に干渉はできるがその権限は自治に比べて大きくなく、あまりに目立った行為は処罰の対象になりかねない。
前に徹が関わった事件で酷い目にあった。
「あぁ~、腹減った~♪さっさと帰ろうぜ!」
…当事者は全く堪えていないが。
「あれ?いま食べてませんでしたっけ?」
何気ない光景に谷本さんが笑い、それにつられて上条や徹も笑う。
谷本さんが周りの環境に馴染んでいくのもそう遠くないと思わせる光景だった。
「……けて。」
?…いまのは,何か声が聞こえたような…。
「…すけて。」
どこからだろう…。なんだか弱りきったか細い声が。
「助けて…。」
!!! 確かに聞こえた!女の子が助けを求める声!
僕は無意識に今も燃え盛る建物へと駆け出していた。
「ちょっと君!!そこは立ち入り禁止だ…ってうぉあっ!?」
制止する隊員を横目にKeepOutのハードルを飛び越える。
すでに水纏を使って身体能力を通常より底上げしているので隊員を出し抜くくらいは朝飯前だ。
炎々と燃える炎が暴れている建物内。人が隠れられる場所は見当たらなかった。
「はぁ…はぁ…。いったいどこにいるんだ…。」
「ゆ~~~~~~~う!!!!!!!」
建物の中を探し回っていると、後ろから超高速で走ってくるやつが僕の名前を叫んでいた。
あんまり騒がしくするなよ…。建物が倒壊したらどうしてくれるんだ。
「全く…。隊員張っ倒していきやがって。俺まで始末書じゃねーか。」
「始末書だけで済めばいいけどね…。」
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