5人が本棚に入れています
本棚に追加
「てめぇなにしやがったっ!!」
1人の男が怒鳴る。その声はかすかに震えている。
「一応手加減はしといた。死なれても困るし。降参するなら今だぜ?」
少し脅しの意味を込めてこぶしに炎を溜めた。
「お前、火炎使い~フレアマスター~か?」
男が確認を取るように問いかける。
火炎使い。通称はフレアマスターと呼ばれ、名の通り炎を操るモノの総称だ。発火から爆発までその能力は多岐に渡るという。
「そう呼ばれることもあるな。あんまし興味ねぇけど。」
すると男はにやりと笑い、こう言い放った。
「俺も使えるぜ?炎。」
男はナイフを投げ捨てると両手を前に楕円形の形を作った。そして見えない何かを掴み取って俺に投げつけてきた。 瞬間!!
ずばぁぁぁん!!!!
見えない何かは火球へと形を成し、俺の上半身を襲った。
もくもくと煙を上げる俺の上半身。醜く聞こえる男の哄笑。
「クククク…、あはあはははは!自分だけが使える能力だとでも思ったか?バカめ!!そんなんだから…」
耳障りな声をあげる男。
「ごちゃごちゃうるせぇ!!!」
俺はその見るのも疎ましいその顔を思いっきり殴ってやった。
「ごぱっ!!?!」
抵抗なく吹っ飛ぶ男は顔から煙をあげて動かなくなった。
「同じフレアマスターでも貰い火なんて奇異なモンまでは使えないだろ。」
さっき使った”燐火”、そして今使った炎源を吸収して自らの能力に変換する”貰い火”。
多岐に渡る火炎使いの能力系統で俺の血族は少し独特な派生をしたらしく、他の火炎使いとは一線を介す。
「で?どうする??」
もう一度男たちに問いかける。すると恐怯のあまりか男が手に持つ袋を落とす。
その中から…四肢を縛られ口枷を強いられた子供が転げ落ちた。
「なっ!?なんだその子は!!」
男はとっさに子供を首から抱え上げ、ナイフの切っ先をのど元に向けた。
「う、動くな!殺すぞ!!」
まずい!!あの男、かなり動揺してる。早く子供を助けないと。
「よし…そのままだ。動くなよ…?何してる!!早くガキ担げ!!」
膠着状態が続く中、男たちは着々と逃走の算段を立てていた。
この距離だと俺のパンチは届かない。かといって遠距離用能力は子供に被撃するから使えない。
(ちくしょう…!どうすれば…!!)
衰弱しているのか緩慢な動きを見せる子供、それを連れ去ろうとする男たち、何もできない自分…。
最初のコメントを投稿しよう!