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片手で僕たちを制しながらゆっくりと雑木林に近づく主任。
そこにいつも気だるそうにしている主任の姿はなかった。
ゆっくりと近づいていく主任の構えに一切の隙もない。
同じ剣術を学ぶ者としてその構えは惚れ惚れするような綺麗な型だった。
じりじりと神経を焦がすような緊張感が広がる中、不意に
ずる……ずる……。
と何かを引きずるような音が聞こえてきた。
聞こえた先は、雑木林。奥の見えない木々の間から、だんだんと大きくなっていく。
院生の上条と谷本さん、その指令者である主任が身構える。
うっすらと光る夕日の残光のもとに現れたのは
「おっ?みんなそろって何やってんだ?て言うかなんで殺気だってんの!?」
…そこに現れたのは僕が不毛にも心配した徹だった。
なにを拾ってきたのか大きな袋を4つ両手で抱え、さらに腰からロープでくくっているのは気絶した大柄の男4人。
「あー…。えっと…。お前は何をしてるんだ?体鍛えてるのか?それとも馬鹿なのか?」
「前者なんて考えられるか!後者だ後者。」
「いや、それよりもあの人たちは誰なんでしょう?」
身構えていたそれぞれが呆れ顔、冷たい顔、疑問顔をして立ち尽くす。
「いやいやちょっと待て!話を聞いてくれ!!」
「なんだ?そうなった言い訳ならちゃんと納得させる内容がないと聞かないぞ?」
「貴音さんちょっと厳しいね…。」
上条の物言いに谷本さんが少し引いている。
「心配するな。あたしが厳しいのは松本だけだ。」
(いや上条。それはなんのフォローにもなっていない!)
口に出すと火の粉が飛んでくるのでこれは心の中にしまっておこう。
「とりあえず聞いてくれ。実はな………。」
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「てことはこいつらはこの事件の犯人でこの火事を囮に使ってこの子たちをさらおうとしたってことだな。」
徹のつたない説明を上条が要点をまとめて説明する。
「あぁ、そうだ!」
「そしてお前は吹き飛ばされた落下地点に偶然居合わせたこいつらと戦闘を行った。」
「あぁそうだとも!」
「そしてなんとか勝ったお前はこれ全部背負ってここまで来たということだな?」
「あぁその通りだ!!」
「お前行動力だけは無駄にありやがるな!」
「そうか?ありがとう!!!」
「いや、褒められてないから。むしろバカにされてるから。」
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