太鼓屋

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正「お久しぶりです。吉蔵さん。相変わらず碁の修練ですかな?」 吉「ふっふっふ。誠さんとは、今135戦66勝ですからな。負け越してますから、次は勝たねばね。………そうそう。どじょうですが、深川でいいのが揚がったんです。醤油と酒と味噌で煮込むと絶品です。今、準備させてますから。」 太鼓屋には氷倉があり、江戸には珍しく魚の鮮度を長持ちさせる評判の店である。 きっとどじょうも氷漬けにされてるのだろう。 正「この時期に貴重な氷をありがとうございます。父も喜ぶでしょう。道場にもまた遊びに来てください。碁の相手を今か今かと首を長くして待ってますからね。」 吉「ほっほっほ。伺いましょう伺いましょう。………そう、道場と言えば先日八丁堀の旦那が店に来ましてね。ほら、誠さんの道場に通ってる町方の方々。聞くと四谷で殺しがあったみたいで。あまり聞かない料亭なんですがね。2階の隠れ間で、首からスパッと落とされたみたいですな。」 と、同時に吉蔵は右手を首にトントンと当てた。
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