第三章:『無力な自分』

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「サヤさんは訓練とかでは絶対に無茶とかはしないんだ 特に今日の演習みたいに外部からの干渉とかのイレギュラーがある場所ではなおさらね」 俺は肩をすくめながら説明するとカバンの中からバンテージを取り出して腕に巻きつける。 俺の答えに納得したのか竜也は亘と同じようにリストバンドをして、リストブレードの刃が爪状になっている武器『鋼爪』を装備した。 「とりあえずこの状況から抜け出すのが先だ…と言いたいところだけど あんまり動かない方がいいかもな…」 「うん…」 竜也の言葉に真由香も頷く。 俺達はわけもわからない状態でかなり動き回っていた。 そこから更に動くと危険が増す。 万が一、『テリトリー』に入ってしまったら一貫の終わりだ。 だが、 「惺歌ちゃん大丈夫?」 「ええ…」 真由香が根元で座り込んでいる惺歌に声をかける。 動く気配のない惺歌さんが心配になったのだろう。 その行動で俺はあることに気づいた。 この状況で一番まずいのは精神力だ。 周りが同じ景色ということは気配だけで魔物の接近に気づかなければならず警戒心を張り詰め続けなければならないことや、帰り道がわからないことによる不安感が精神力を削っていく。 それは全員に共通することなのだが、人一倍弱い惺歌さんが一番ダメージを受けているに違いない。 俺達がスタートしてそろそろかなり経つ。 おそらくサヤさんあたりが多分捜索を行うはずだから、そこまで深刻な状況ではないのだが…… 『テリトリー』に入っているかもしれないという可能性があるなら、どちらにせよ行動に出たほうが得策か…… 考えをまとめた俺は最終確認を取るために竜也に質問をする。 「竜也…幻術系の魔法を解く魔法は誰も持ってないんだよな?」 「ああ…唯一治療系の魔法を持ってる真由香も傷を治すだけだしな」 「そうか… 俺達がスタートしてかなり経つ そしてこの状況… 賭けに出ないか?」 俺は苦笑しながら竜也に言った。 その真意が読めたのか竜也は驚いたような顔をしてから少し考え込むような仕草をする。
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