第三章:『無力な自分』

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「それは…つまり救援を呼ぶ…いや……位置を知らせるということか?」 「ああ…」 「確かに賭けだな…『奴』が来るのが先か先生達が来るのが先か…」 「でも…このままだとジリ貧だろ?」 俺はそう言いながら視線だけ惺歌さんの方に向ける。 竜也もつられるように同じようにする。 そして少し考えて 「…わかった やる…」 「竜也、直人!」 答えようとした竜也だが、その声を遮って亘が全力で叫んだ。 「何が…」 ズゥン! 俺達は亘が叫ぶような状況を想定しながら振り向こうとするが、それを終える前に鳴り響いた足音でどういった状況か理解した。 俺達は賭けに出る前に賭けに負けていたのだ。 その状況を見せつけるように俺達の目の前に亀の背中に岩と木を背負ったような体をした魔物が姿を現す。 魔物『フォレスト・タートル』 ランクAの魔物でこの森の主 自身のテリトリーを持っていて基本的にテリトリーに入っていなければ襲ってこない比較的おとなしい魔物 火炎魔法と雷電魔法中心の魔力の放出を感知すると自分のテリトリーを守るためにテリトリーから出て放出を行った者を襲う。 と言ってもまだ幼体で体長は”わずか”20mしかない。 それですらランクAなのだ。 成体になると森そのものとなるらしい。 っと…今はそんなことはどうでもいい。 俺達はまだ火炎魔法や雷電魔法を誰も使ってない。 なのにこいつは襲ってきている。 つまるところ答えは一つしかない…… 俺達は既に『テリトリー』に入っていたのだ。
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