第三章:『無力な自分』

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ヤバッ…足が…… 圧倒的実力差を持つ相手を目の前にした瞬間、俺の足は震えだす。 「竜也ぁああああ!」 だが、俺はなんとか堪え、震えを消すかのように竜也に向かって叫ぶ。 竜也も圧倒されていたようで、俺の叫びに対してびくつく。 だが、理解したように数歩下がって掌を天にかざして。 「『雷鳴の昇堕』!」 天高く雷の柱を伸ばした。 もうすでにテリトリーに入っているなら使おうが使わまいが関係ない。 今は一刻も早く救援を要請しなければならないのだ。 「ガゥアアアアア!」 「やかましいわ!黙っとれ!『沈黙の氷纏華』!」 「アッ…(パキャ!)アァアア!」 咆哮を上げる亀野郎の口を封じようと亘が魔法を放つがそれはあっさり噛み砕かれ霧散する。 「いくらなんでも半端無さ過ぎるやろ…」 「『聳え立つ尖塔』!」 引きつった笑顔で下がる亘に代わって竜也が魔法を放つ。 その魔法は亀の腹を貫くかのように尖った塔を伸ばすのだが… ガララ… あっけなく弾き返されて砕けてしまった。 (竜也達の魔法がまるで紙じゃないか! これでどうやって持ちこたえる!?) 俺は必死に頭の中で次の行動をシュミレートする。 これでサヤさんが来てくれるのは確実だが、その時間でどうやって生き延びるかを考えるのが先だ。 「直人君!とりあえずテリトリーから出よう! なんでかは知らないけど幻覚魔法が解けてる!」 頭で必死に考える俺に真由香は惺歌さんを背負いながら走る準備をしていた。 周りを見渡すと確かに景色が変わっており、テリトリー内であることが視覚的に理解できるようになっていた。 「わかった! 竜也!亘!一旦テリトリーから出るぞ!」 俺はそれに頷きながら、構えている竜也達に声をかける。 聞こえた瞬間に俺達のところへ来た亘とは対照的に竜也は一旦立ち止まって 「わかった!『盲目の閃雷』!」 目晦ましのための魔法を亀にぶつけた。 「早く行くぞ!感知タイプには数秒しか意味がない!」 「「わかってる(とる)!」」 急かす竜也に俺達は叫びながら走り出す。 最低限テリトリーから出ないとサヤさんが来たところでどうしようもない。
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