第三章:『無力な自分』

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とりあえず一時的にだが、なんとか記憶にあるテリトリーから脱出することができた俺達はなるべく物陰に隠れて作戦を練ることにした。 もちろん倒したり撃退したりするものではなくなるべく移動せずにサヤさんが来るまで持ちこたえる事が目標だ。 「とりあえず、奴にはブレスと特殊な攻撃方法が無いことは確かだよな… なら徹底的に接近戦か…」 「そうやな~」 「ちょっ!ちょっと待て! 普通、接近型と中距離型の二つに分けるのが奴と戦う時のセオリーのはずだろ? ちょうど接近型と中距離型が二人ずついるんだから」 作戦をたてる前にそのようなことを言う竜也と亘に俺は思わずツッこむ。 だが、竜也と真由香は俺の方を向いてから少しため息を付く。 「あのなぁ…咲夜っちとサキっちがおらんかったらなんもでけへんやろ…… 普通の魔物相手ならまだしも奴相手なら正直足でまといやで……そこんとこわかっとると思っとんねんけどなぁ… 直人の役目は疲弊してる惺歌っちを担いで安全なところへ移動し続けることや」 亘に至っては全くオブラートに包むこともなくド直球で言い切ってしまった。 流石に俺もここまで言われてしまったら大人しく引き下がるしかなかった。 「わかった…怪我…するなよ…」 「それでええ…」 大人しく引き下がる俺に亘は苦笑してくる。 それから作戦の話に入るのだが、やはりというべきか実力と情報がかなり不足しているためなかなかこれといった物が出来上がらずにいた。 「とりあえず決まったのは地殻魔法で落とすっちゅう原始的な方法と…」 「水陣との組み合わせでこの辺一帯を沼地に変える方法…か…… 流石にこれだけじゃ……」 亘の言葉に繋ぐように真由香がいうがその口調と表情からしても芳しくないことは明白で、状況は何一つ良くなりそうにもなかった。 一応、俺も考えてはいるのだが、いかんせん真友香達の使える魔法に関しての知識が乏しいためこれ以上どうしようもなかった。 だからだろう…惺歌さんが膝を付いて震えているのが目に入ったのは…… おそらく恐怖からくるものだろうと思った俺はゆっくり惺歌さんのもとへ寄って 「大丈夫です 絶対に助かりますから…」 落ち着いた風を装った口調でそう告げた。 だが、惺歌さんからは「ええ…」としか返ってこない。
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