第三章:『無力な自分』

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ふと視線を腰に付けてあるあるシャルム独特の水筒に視線を移すともう水がなくなっていた。 「水もうないじゃないですか…俺のまだ余ってるんで使ってください…… 俺は大丈夫なんで」 まだ、奴が来るには時間があるだろうと俺は自分の水筒を外してハンカチで飲み口を拭いてから惺歌さんに差し出す。 動かなかったら横に置くことくらいはしないととも思いながら。 だが、惺歌さんは予想に反して今度は顔を上げて 「ありがとう…じゃあお言葉に甘えて」 そう言いながら俺の水筒を受け取ってそれを自分のと入れ替えた。 そして、落ち着かないのだろう…再び膝を抱えてしまう。 (しょうがないか……ん?) そんなことを思いながら立ち上がると惺歌さんの左手側に何かがいくつか落ちてるのに気づいた。 俺はそれを拾い上げて確認する。 (なんだ?これ…なんかの紙か?) それはだいたい8cm四方くらいの大きさの紙だった。 数はだいたい3枚ほど… その時、ふと俺は違和感を感じた。 どう言えばいいのだろう…一瞬だけ軽い立ちくらみしたような感覚だろうか…… とりあえずその感覚がした瞬間、俺は本能的に叫んだ。 「逃げろ!」 と…… だが、それは一足遅く… 「ぐぼぁ!」 「「えっ…?」」 俺が次の瞬間に見たのは『フォレスト・タートル』の尻尾に弾き飛ばされる竜也の姿と一瞬何が起こったか理解できずに呆ける真友香と亘の姿だった。 このあとすぐに大河を連れたサヤさんが駆けつけて『フォレスト・タートル』を退かせてくれた。 竜也はその時、左腕骨折と肋骨を3本骨折、内臓損傷、右腕打撲、大腿骨複雑骨折の重傷を負っていたが、真友香の魔力のほとんどを使った『フェアリーキュア』の性能があまりにも高かったおかげで軽傷までに回復できた。 流石にまだ自力では立てないが病院で更に治療を受けたら回復するだろう。 今病院にいるのはそういうことだ。
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