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結局、部長に手伝ってもらい仕事はなんとか納期に間に合った。
帰った後輩は、そのまま会社を辞めた。
「辞めたのは、佐々木さんのせいだけじゃないですよ。元々、仕事続くタイプじゃなさそうだったし」
落ち込んでいた私を慰めたのも、木村さんだった。
木村さんは、それから2年後に寿退社をした。
「1人で抱えて潰れちゃ駄目ですよ。大事なのはバランスです」
出勤最終日、木村さんが私に言った。
亮は黙って聞いていてくれた。
「まだバランス上手に取れてないけどね」
私はおどけて笑った。
「ここにいるよ、陽子みたいに仕事が大好きな人間」
亮は優しく笑って、自分を指差した。
「亮も私も天然記念物なんだよ」
私は笑った。
「私ね、だから清水に無理強いはしないって決めてるんだ。あの頃より自分に余裕があるしね」
亮が食後にコーヒーを入れてくれた。
あれから私は人に多くを求めない。
人それぞれ生き方があるんだと、当たり前の事に気がついたのだ。
「仕事しなきゃ」
私はパソコンを広げ、仕事を始めた。
亮は私の横でコーヒーを飲みながら、現場の図面を見ている。
こんな時間も心地好いと思いながら、私は日付が変わるまで仕事をした。
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