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「おはようございます…」
私のデスクに来た清水が何か言いたそうにしていた。
「どうしたの?仕事はデスクに置いといたよ」
私はメールのチェックをしながら聞いた。
「昨日はすみませんでした」
私は手を止めて、清水を見た。
今までも仕事を残して帰った事は何度もあったが、謝ってきたのは始めてだった。
「彼女に怒られました」
清水は恥ずかしそうに言った。
「仕事より女を優先するなんて有り得ないって言われました」
「彼女、年上なの?」
私はびっくりして、思わずプライベートな質問をしてしまった。
清水の彼女は、清水と同い年の22歳らしい。
老舗旅館の一人娘で、今は経験も兼ねて都内のホテルで働いているらしい。
「しっかりしてる子だね」
私がそう言うと、清水は嬉しそうに頷いた。
「俺、仕事頑張って…寿退社目指します」
「は?」
私は意味がわからない発言に聞き返した。
「仕事頑張って彼女に認めてもらって、旅館に婿入りします」
私は清水の勢いに、何度も頷いた。
「わかった。じゃあ、仕事しよう」
清水をデスクに戻し、私はしばらく放心状態だった。
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