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「今日、どこか出掛けるの?」
結婚式の日、亮が日曜日なのにスーツを着ていた。
仕事の時とは違うお洒落なスーツだった。
「ちょっとね」
私ははっきり言わない亮を不思議に思いながら、時計を見た。
「もう行かなきゃ」
私はパーティードレスの上に、夏物のショールを羽織った。
「まだ羽織らなくてもいいのに。車で送るよ」
「予定あるんじゃないの?」
亮は少し笑って、車の鍵を持ってきた。
式場は、こじんまりした可愛い教会だった。
「終わったら電話して。迎えにくるから」
「ありがとう」
私はそう言って車から降りた。
亮に予定がない事は何となく気がついた。
教会に入ると、もう何人か参列者が来ていた。
私は新郎側の後の方に座った。
「あなたが佐々木さん?」
紋付きの着物を着た女の人が話し掛けてきた。
その人懐っこい笑顔で、一目で前田のお母さんだとわかった。
「はい、佐々木です。お言葉に甘えて、参列してしまってすみません」
私は立ち上がって挨拶をした。
「来てくれてありがとう。新郎側なんて、逆に気を使わせてしまってごめんなさいね」
私は笑顔で首を横に振った。
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