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「否定して欲しくて、甘えただけだから。答えなくていい」
私はそう言って笑った。
「でも、本当に勝手だなんて思ってないよ」
亮は優しく笑いながら、言った。
私は苦笑いした。
「陽子が結婚できない理由って、仕事と両立できないからなんだよね?」
亮の真剣な顔に、私は頷いた。
「でも、それって育児と仕事でしょ」
「…家事だって、ちゃんと出来ないよ」
私は少し考えて言った。
「ちゃんとって何?」
亮は少し笑って言った。
「今だって、俺達困ってないじゃん」
自炊はほとんどしていないが、それ以外は2人で協力してやっている。
一人暮らしの時より、楽になったと言ってもいい。
「亮は今のままでいいの?一生、家事は分担みたいな感じでいいの?」
私は思い切って聞いてみた。
「とりあえず、陽子じゃなきゃ駄目だからね。その上、仕事してる陽子が何よりも好きだからね」
「私が好きだから、我慢してるって事でしょ?」
こんな場面で、和樹の我慢という言葉が頭に浮かんでしまった。
和樹のように、亮を失いたくはなかった。
「我慢とは少し違うよ」
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