二兎追うもの

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15時過ぎ、私は前の現場に電話を入れた。 「所長、お久しぶりです。佐々木です」 所長は挨拶をした後、関口さんを紹介してくれた。 関口さんは名刺交換をした事はあるが、一緒に仕事をするのは初めてだ。 たしか亮の後輩で、竣工図の担当らしい。 「佐々木さんと仕事できるなんて、光栄です」 少し軽い感じが私は苦手だと思った。 「急で申し訳ありませんが、お盆休み前に打ち合わせしたいんですが…」 私がそう言うと、今日の19時半なら大丈夫だと言われた。 「大丈夫です。では事務所に行きます。よろしくお願いします」 私はそう返事をして、電話を切った。 亮を見ると、難しそうな顔で電話をしていた。 亮に言う前に打ち合わせになってしまった事は気になったが、今は話し掛けるべきではないと思った。 今日も18時過ぎには帰れるだろうし、この現場に支障をきたす仕事ではない。 今わざわざ報告する事は、公私混同のような気がした。 私は結局忙しそうな亮に何も言えないまま仕事を終え、打ち合わせに向かった。
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