二兎追うもの

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「お疲れ様です。お久しぶりです」 私が前の現場の事務所に着くと、亮の時と同じように奥の部屋に案内された。 事務所はもう終わりという事もあり、人は少なかったがみんな忙しそうにしていた。 私が部屋に入ると、もう関口さんは中で待っていた。 一瞬、亮の顔が浮かんだ。 この部屋で、亮以外と打ち合わせすることになるなんて想像した事もなかった。 「佐々木さん、まずは仕事の話しましょうか?」 関口さんの軽い感じと『まずは』という言葉に引っ掛かりながら、私は打ち合わせを始めた。 「納期は8月末までなので、よろしくお願いします」 一通り説明が終わり、私は確認し忘れている事がないかメモを確認した。 「では、お盆休み明けぐらいに一度進捗状況など報告します」 私は帰る支度をして立ち上がった。 「これから、食事でもどうですか?」 「せっかくなんですが、まだ社に戻って仕事がありますので。すみません、またの機会に」 私は即答して事務所を出た。 そして、そのままマンションに帰った。
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