二兎追うもの

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「とりあえず、帰って来なよ」 会社を出て、亮に電話するとそう言われた。 私は真っ直ぐマンションに帰った。 「ただいま…」 玄関のドアを開けただけでわかった。 「亮、カレー?」 私は急いでリビングに向かった。 「お帰り」 亮に抱きしめられた。 「ただいま」 私は亮の背中に腕を回した。 「俺は陽子が食べたいんだけど、陽子はカレーがいい?」 私は思わず笑ってしまった。 「カレー、食べたい。お腹ペコペコ」 少し拗ねた顔で亮は、私にキスをした。 「手、洗っておいで。もう食べられるよ」 亮はキッチンに行き、私は洗面所に行った。 亮のカレーはとても美味しかった。 「陽子は俺がご飯作って待ってて、どう思った?」 カレーを食べ終わった頃、亮が聞いた。 「美味しかったよ」 私の答えに亮は納得していないようだった。 「正直に言って」 亮は私を真っ直ぐ見て言った。 「…少し後ろめたい」 私は素直に言った。 女の私が亮にこんな事をしてもらうなんて、少し間違っているような気がした。
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