二兎追うもの

16/20

1144人が本棚に入れています
本棚に追加
/329ページ
「考え事は解決しそう?」 気がつくと、亮が私の後に立っていた。 私はごまかすように笑った。 「考え過ぎも良くないよ」 亮は私を後から抱きしめた。 「そんなこと言ったって、西園寺陽子になりたいんだもん」 私は少し拗ねた様に言った。 「俺も逃がすつもりないから、大丈夫」 私は少し笑った。 「お風呂沸いてるんだけど、久しぶりに一緒に入ろう」 亮が私を抱きしめる腕を強めて言った。 「え?」 「逃がすつもりないよ」 私はそのまま、お風呂まで連れていかれた。 「陽子、愛してる」 私をいじりながら、亮が囁いた。 私は何も考えられなくなって、やっぱり亮には敵わないと思った。 「やっぱり…亮には敵わない…」 私が必死に声に出すと、亮が少し笑った。 「こういう時はそれでいいんじゃない?でも、俺も全然余裕ないけど」 「嘘つき…」 私は亮にしがみついて囁いた。 「嘘じゃないよ。今だって、どうやって上手にベッドに連れて行こうが悩んでるし」 「馬鹿…」 私は呟いた。
/329ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1144人が本棚に入れています
本棚に追加