二兎追うもの

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「辞めなくてもいいんじゃないかって言ったら…」 部長は2本目のタバコに火をつけた。 「二兎追うものは一兎も獲ずっていうじゃないですか…だって」 私は自然とため息が出た。 仕事と結婚、どちらも欲しいなんて無理なんだと言われた気がした。 「佐々木、よく聞けよ」 ため息をついた私に、部長が真剣な顔で言った。 「二兎追うものにしか二兎は獲られない…俺はそう思う」 「簡単に言いますね」 私は少し意地悪な顔で言った。 部長の言いたい事はわかるが、言うほど簡単な事ではない。 「1つしか選べないなんてスタンスで、結論を出すなって言ってるんだよ」 部長は少し大きな声になった。 「佐々木の彼氏ってあの人だろ?」 私はどきっとしたが、肯定も否定もしなかった。 部長は私と亮の事に気づいているようだ。 「俺は、佐々木もあの人も信じてる。探せ、とにかく欲しいもの全部手に入れる方法を探せ」 私は熱く語る部長に、泣きそうになった。 私の事をここまで真剣に考えてくれているなんて思いもしなかった。 「俺も上司として、してやれる事を探すから。とにかく、簡単に諦めるなよ」
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