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「ほら、寝ちゃった」
叔母さんは愛しそうに大将を見て言った。
私と亮は少し笑った。
「これからは、店を手伝うの?」
生ビールのお代わりを持ってきてくれた叔母さんに、亮が聞いた。
「たぶんね」
叔母さんは嬉しそうに言った。
「仕事、どうして辞めたんですか?」
私は気になっていた事を思い切って聞いてみた。
「もう充分かなって思ったからかな」
「充分…?」
私は呟いた。
「私達夫婦に子供がいない事は、亮から聞いてるでしょ?」
私は頷いた。
「出産子育てを経験してない女って、女として一人前じゃない気がして」
叔母さんは少し寂しそうに笑った。
「そんなことないですよ」
私の力のない言葉に叔母さんは首を横に振った。
「陽子ちゃん、ありがとう。でも、私はそう思ったの」
叔母さんは生ビールを一口飲んだ。
「子供が出来ないってわかった時に、この人は仕事を辞めて店を始めた。私はがむしゃらに働いた、お母さんになれないならキャリアウーマンにでもならなくちゃみたいに」
私も亮も黙って聞いていた。
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