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マスターはにっこり笑って、カクテルを置いて他のお客さんのところに行った。
私はカクテルを飲みながら考えた。
来週の竣工祝いはなるようになれと覚悟を決めたが、宣言した自炊は亮に頼りっぱなしだ。
私はため息をついた。
「はい、次はこれでしょ?」
マスターが私のグラスが空いたタイミングで、ズブロッカを出してくれた。
「ありがとう」
私はお礼を言って、一口飲んだ。
口に広がった香りに思わず微笑んだ。
そんな私を見てマスターは安心したように、また他のお客さんのところに行った。
時計を見ると、21時を過ぎていた。
私は亮にズブロッカにいるとメールを入れた。
1人になりたかったのではなく、1人でいたくなかったのだと気がついた。
マンションで1人、亮の帰りを待つ気になれなかったのだ。
どんどん弱くなる自分が、不思議と嫌ではなかった。
「22時くらいには行けるから、大丈夫ならズブロッカで待ってて」
亮から返信が来た。
「待ってるね」
私はすぐに返信をした。
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