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20時半過ぎに清水は帰っていった。
「そろそろ上がりませんか?」
仕事に集中していて、亮に話し掛けられるまで亮が側に来たことにも気がつかなかった。
少し驚いて、時計を見ると22時を過ぎていた。
「もうこんな時間なんですね。上がります」
私は亮を見て言った。
「私も上がりますので、駅まで一緒に帰りましょう」
「…はい」
私は戸惑いながら言った。
一緒に帰ろうなどと事務所で亮が言った事はない。
明日の竣工祝いの誘いといい、今日の亮は少しいつもと違っていた。
「帰る支度が出来たら、声をかけて下さい」
亮はそう言うと、デスクに戻っていった。
私は動揺を隠すように軽く伸びをし、帰る支度をした。
「西園寺さん、支度終わりました」
私が亮に声をかけると、亮は鞄を持って立ち上がった。
「お疲れ様です。お先に失礼します」
出勤してきた事務所の夜勤班に挨拶をして、事務所を出た。
始めて亮と2人で駅まで歩いた。
「俺、自然だった?」
突然の亮の言葉に私は亮を見上げた。
「陽子と前田さんが2人でいても全然不思議じゃない」
亮の言っている意味がわからなかった。
「俺と陽子が2人でいても不思議じゃないんじゃないかって」
「そういう事か…」
私は納得した。
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