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「佐々木さんは結婚ってキャラじゃないからなぁ」
「ひどいですね」
私はまた笑顔で答えた。
「じゃあ、また後で」
私は軽く流し、また別の人に挨拶に行った。
基本、この繰り返しだ。
不必要なボディタッチがなくなった頃から、私の結婚の話題ばかりになった。
私の感情はお構いなしに、笑いのネタの様にみんなが話す。
それを私は、頬が筋肉痛にでもなりそうなくらいの笑顔で受け流す。
結婚に興味がない強い女、結婚したいのに出来ない寂しい女、相手が望むキャラクターを演じて応える。
心の中では、冷えたビールが飲みたいとか、タバコが吸いたいとか考えながら。
「所長、お疲れ様です」
何人かに挨拶をし、やっと所長までたどり着いた。
「佐々木さん、本当にありがとう。竣工図もスムーズにいったのは、佐々木さんのおかげだよ」
「ありがとうございます。また、何かあったらよろしくお願いします」
私達はビールをつぎあい、乾杯をした。
「彼氏とかはいないの?」
「世の中には物好きもいるみたいですよ」
私は適当に質問をかわした。
「佐々木さん、早く俺のところにも来てよ」
少し酔っ払った関口さんが、割り込んできた。
「じゃあ、また」
所長は他の人の挨拶を受けるために、離れて行ってしまった。
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