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「この前は、仕事ありがとうございました」
私はそう言って、関口さんにビールをついだ。
「向こうでタバコ吸わない?」
関口さんは、隅の喫煙所の様になったテーブルを指差した。
タバコという魅力的な誘いに私は頷いた。
隅のテーブルに向かう途中、目が合った前田にタバコを吸うジェスチャーをした。
「この後、どうするの?」
タバコに火をつけながら、関口さんが聞いた。
「帰りますよ。この後、キャバクラとかですよね」
私もタバコに火をつけた。
「どこか飲みに行かない?」
関口さんはわざと顔を近づけ耳打ちした。
「無理ですよ。私と前田じゃそこまでのお金動かせませんから」
私はわざと接待であることを強調して続けた。
「うちの会社、役職者以外は事後報告じゃ会社からお金出ないんですよ」
「そういう意味じゃないんだけどなぁ」
関口さんは私を見つめた。
「佐々木、ライター貸して」
抜群のタイミングで前田が側にやってきた。
私は関口さんの言葉が聞こえなかった振りをして、前田にライターを渡した。
「前田さん、邪魔しないでよ」
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