本当の気持ち

3/16

1144人が本棚に入れています
本棚に追加
/329ページ
「寝ちゃったの?」 私は前田に近づき、子供の顔を覗き込んだ。 「さっきまで起きてたんだけどね」 私は恐る恐る子供に触れようとして、慌てて手を引っ込めて言った。 「手、洗ってくる。洗面所貸して」 「そんなに神経質にならなくても。でも、ありがとう」 前田は少し笑って、洗面所の場所を教えてくれた。 「では改めて」 私は洗面所から戻ると、そっと子供の手に触れた。 「爪、ちっちゃい」 私は思わず呟いた。 「可愛いね。前田、幸せ者だね」 私は小声で話した。 「抱いてみる?」 前田がそう言ってくれたが、私は首を横に振った。 「せっかく気持ち良さそうに寝てるのに、起こしちゃったら可哀相だもん」 前田は少し笑って、子供を抱いたままソファーに座った。 「コーヒーでいいですか?」 真理ちゃんが言った。 亮はもうソファーに座っていた。 「ありがとう。手伝うよ」 私は真理ちゃんとキッチンに行った。 コーヒーの用意をし、4人で私達が持ってきたケーキを食べた。 「なかなか遊びに来れなくてごめんね」 私が真理ちゃんに言うと、真理ちゃんは首を横に振った。 「佐々木さんは忙しいから、しょうがないですよ。今日来てくれただけで、十分です」 真理ちゃんの笑顔は、結婚式の時とは比べようもないくらい幸せそうだった。
/329ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1144人が本棚に入れています
本棚に追加