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「寝ちゃったの?」
私は前田に近づき、子供の顔を覗き込んだ。
「さっきまで起きてたんだけどね」
私は恐る恐る子供に触れようとして、慌てて手を引っ込めて言った。
「手、洗ってくる。洗面所貸して」
「そんなに神経質にならなくても。でも、ありがとう」
前田は少し笑って、洗面所の場所を教えてくれた。
「では改めて」
私は洗面所から戻ると、そっと子供の手に触れた。
「爪、ちっちゃい」
私は思わず呟いた。
「可愛いね。前田、幸せ者だね」
私は小声で話した。
「抱いてみる?」
前田がそう言ってくれたが、私は首を横に振った。
「せっかく気持ち良さそうに寝てるのに、起こしちゃったら可哀相だもん」
前田は少し笑って、子供を抱いたままソファーに座った。
「コーヒーでいいですか?」
真理ちゃんが言った。
亮はもうソファーに座っていた。
「ありがとう。手伝うよ」
私は真理ちゃんとキッチンに行った。
コーヒーの用意をし、4人で私達が持ってきたケーキを食べた。
「なかなか遊びに来れなくてごめんね」
私が真理ちゃんに言うと、真理ちゃんは首を横に振った。
「佐々木さんは忙しいから、しょうがないですよ。今日来てくれただけで、十分です」
真理ちゃんの笑顔は、結婚式の時とは比べようもないくらい幸せそうだった。
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