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私は意外な清水の言葉に思わず聞き返した。
そして、清水の彼女の事を思い出した。
「彼女、旅館の一人娘だったよね?結婚決まったの?」
清水は首を横に振った。
「結婚はまだ決まってません。でも、来年には実家に戻るそうです」
清水は俯いたまま答えた。
「プロポーズしないの?」
私はタバコに火をつけて聞いた。
清水はため息をついた。
「仕事頑張って旅館の婿入り目指すって…言ってたじゃん」
「そうなんですけど…」
清水は顔を上げて、私を見た。
「俺、仕事が楽しくなったんです」
真剣に仕事をするようになってから、清水が変わったと私が感じていたのはこれだったのだと気が付いた。
「俺、仕事続けたいんです。でも今の彼女の事が好きだから」
仕事を続けると言う事は、彼女と別れなければならないらしい。
それ程大きい旅館の一人娘らしい。
「彼女と別れてまで仕事を続けるのは違う気がするんですけど、それでも仕事辞める決心がつかなくて」
清水はそこまで一気に話すと、また俯いた。
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