プロポーズ

7/13

1144人が本棚に入れています
本棚に追加
/329ページ
プロポーズされたら、驚いたふりをする方がいいのだろうか。 私がプロポーズされるとわかっている事に亮は気がついているから、下手な芝居だとばれるだろう。 人生初のプロポーズは唐突で心の準備も出来ていなくて蹴散らしてしまったが、予告されたプロポーズも厄介だと思った。 そこまで考えて私は苦笑いした。 亮にプロポーズされる日に、よりによって和樹の事を思い出すなんて思いもしなかった。 しかも懐かしい思い出の様に蘇り、危うく笑い話にでもしてしまいそうだった。 つくづく自分は嫌な女だと思った。 「陽子、起きた?」 シャワーから出てきた亮に話し掛けられ、私は我に返った。 「あ、うん。私もシャワー浴びてくる」 私はプロポーズに対する動揺と、自己嫌悪に陥りそうだった自分をごまかす様にシャワーに逃げた。 洗面所の鏡に映った自分と目が合い、苦笑いをした後ため息をついた。 何故かいつもより念入りにシャワーを浴びて、少し落ち着いてリビングに戻った。 リビングでは亮がもうすでに着替えを済ませていた。 デニムをはいた普段と変わらない格好に、出掛ける場所の予想が外れているとわかった。
/329ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1144人が本棚に入れています
本棚に追加