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プロポーズされたら、驚いたふりをする方がいいのだろうか。
私がプロポーズされるとわかっている事に亮は気がついているから、下手な芝居だとばれるだろう。
人生初のプロポーズは唐突で心の準備も出来ていなくて蹴散らしてしまったが、予告されたプロポーズも厄介だと思った。
そこまで考えて私は苦笑いした。
亮にプロポーズされる日に、よりによって和樹の事を思い出すなんて思いもしなかった。
しかも懐かしい思い出の様に蘇り、危うく笑い話にでもしてしまいそうだった。
つくづく自分は嫌な女だと思った。
「陽子、起きた?」
シャワーから出てきた亮に話し掛けられ、私は我に返った。
「あ、うん。私もシャワー浴びてくる」
私はプロポーズに対する動揺と、自己嫌悪に陥りそうだった自分をごまかす様にシャワーに逃げた。
洗面所の鏡に映った自分と目が合い、苦笑いをした後ため息をついた。
何故かいつもより念入りにシャワーを浴びて、少し落ち着いてリビングに戻った。
リビングでは亮がもうすでに着替えを済ませていた。
デニムをはいた普段と変わらない格好に、出掛ける場所の予想が外れているとわかった。
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