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車から降りて、手をつないで展望デッキまで歩いた。
家族連れなどで賑わう展望デッキの一番端まで歩き、2人で海を見ていた。
亮が何も言わないから、私も何も言えなかった。
緊張で引き攣った顔を見られたくなくて、私はただ目の前の海を見ていた。
「陽子」
亮が繋いだ手を強く握りしめ、私の名前を呼んだ。
私は亮にわからないように小さく深呼吸をして、亮を見た。
亮は私の頭を優しく触って言った。
「結婚しよう」
どんな反応をしようなんて悩んでいた自分が馬鹿だった。
亮が頭に触る手で解けた緊張と、優しい亮の笑顔で私は涙目になった。
「普通とかみんなとかそんな事はどうでもいい。俺達は俺達の幸せな結婚をしよう」
私は頷くだけで精一杯で、緊張で汗ばんだ左手をそっと服で拭いた。
「指輪、まだ買ってないよ」
「え?」
私の仕種を見た亮が笑って言った。
「一緒に選んだ方がいいかと思って」
私は曖昧に頷いた。
「やっぱり、用意しといた方がよかった?…いろいろ悩んだんだけど、陽子と決めた方がいいかなって」
慌てる亮と目が合って、私達は吹き出した。
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