プロポーズ

9/13

1144人が本棚に入れています
本棚に追加
/329ページ
車から降りて、手をつないで展望デッキまで歩いた。 家族連れなどで賑わう展望デッキの一番端まで歩き、2人で海を見ていた。 亮が何も言わないから、私も何も言えなかった。 緊張で引き攣った顔を見られたくなくて、私はただ目の前の海を見ていた。 「陽子」 亮が繋いだ手を強く握りしめ、私の名前を呼んだ。 私は亮にわからないように小さく深呼吸をして、亮を見た。 亮は私の頭を優しく触って言った。 「結婚しよう」 どんな反応をしようなんて悩んでいた自分が馬鹿だった。 亮が頭に触る手で解けた緊張と、優しい亮の笑顔で私は涙目になった。 「普通とかみんなとかそんな事はどうでもいい。俺達は俺達の幸せな結婚をしよう」 私は頷くだけで精一杯で、緊張で汗ばんだ左手をそっと服で拭いた。 「指輪、まだ買ってないよ」 「え?」 私の仕種を見た亮が笑って言った。 「一緒に選んだ方がいいかと思って」 私は曖昧に頷いた。 「やっぱり、用意しといた方がよかった?…いろいろ悩んだんだけど、陽子と決めた方がいいかなって」 慌てる亮と目が合って、私達は吹き出した。
/329ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1144人が本棚に入れています
本棚に追加